1980年代に起きた不動産バブルの時は、土地や建物は所有すれば必ず儲かるという”土地神話”というものがありました。
みんながそう信じ込んでいたため、猫も杓子も誰もがお金を借りて土地などに投資していました。
ここ数年の間に、東京オリンピックの影響で関東のあたりのマンションなどが高騰しているという話もちらほらみられましたが、日本人には昔のバブルの時の苦い経験がありますから慎重に対処するのが通例に思えます。
最近では、不動産投資は元を取るのが非常に難しくなっており、素人の入る余地はないと言われています。
まあ、トントンで売却できれば良い方と思っておいて間違いないでしょう。
購入してから不動産の価値は下がるのが当たり前で、なんらかの都合で売却すると譲渡損失がでることが多くなりました。
まあ、これが本来の姿でしょう、不動産に限らず自動車なんかでも普通はそうですね。ただ、異常に人気が出た場合には高騰することもあるのでしょうけど、稀だと思っている方が無難ですね。
不動産を売却した時の対応や、損失の処理のことについて、また、確定申告でどうするかについて紹介します。
(今のところ、平成29年末までは役に立つ情報です)
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不動産を売却した時は
不動産を売却したことによって生じた所得を譲渡所得といいます。売却した時に得たお金から、買った時に要したお金の総額を差し引いて残った利益のことになります。この儲かった譲渡所得に対しては、他の所得(給与所得など)と分離して所得税と住民税が課税されます。
単純に売買にかかった金額だけでなく、仲介手数料、不動産登記の費用、測量費、印紙代、立退料、減価償却費なども考慮に入れ所得を割り出します。
譲渡益に対する税率は他の所得と分離して、決まっている分離課税の税率となり、対象となる不動産の用途や所有期間により税率が異なってきます。
その不動産を所有して5年以下(短期譲渡所得)なのか、5年超(長期譲渡所得)なのかによってかかる税率は違ってきます。
所得税 | 住民税 | 合計 | |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
*ただし、平成49年までは、所得税には、復興特別所得税(基準所得税×2.1%)が課税されます。
また、特別控除というのがあって年間5000万円を上限に特例が認められています。
特例 | 特別控除額 |
公共事業 | 5000万円 |
自己の居住用財産を売却した場合 | 3000万円 |
特定土地区画整理事業など | 2000万円 |
特定住宅造成など | 1500万円 |
農地保有の合理化など | 800万円 |
合計で最高5000万円までは利益がでても税金がかからないと言うことです。
実際発生した譲渡所得のうちどこまで控除されるかということを指します。
ここまでは儲かった場合についてですが、
もちろん儲からなくて譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。余程安くで購入する機会に恵まれたりとか、購入した後で想定外なことが起こり値段が高騰したなどのラッキーがなければ、儲かることはないので。課税されることもなくこれらのことを考える必要はないでしょう。
ただ、いくら下がるのが当たり前だからと言って何も手を打たずに放置するのも嫌だと思いませんか。
少しでも、足しになるようなものがあれば、対処してみたいと思うのが人情というものですね。
不動産の売却で損失がでた場合
国税庁のホームページには、
「個人が、土地又は建物を譲渡して長期譲渡所得又は短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。」と書かれています。
不動産の譲渡損失の相殺は同じ不動産の譲渡所得とするということです。給与所得などと相殺はできません。
でも、これに特例があるんです。
1)特定居住用財産の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(売却しただけの場合)
2)居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例(住居買い換えの場合)
1)が住居を売却して賃貸などに住む場合、2)が住居を売却して新しい住居に住む場合です。
1)の場合の特例は、
譲渡損失が給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算ができる。
もし1回で全額損益通算できなければ、翌年以降3年以内に繰り越すことができる。
ということです。
その適用要件は以下の4つを満たすことです。
(1)平成16年1月1日から平成29年12月31日までに譲渡の年の1月1日現在において、土地建物の所有期間がいずれも5年を超えていること。
(2)(1)の譲渡にかかる契約を締結した日の前日において、譲渡資産にかかわる住宅ローン等(契約における償還期間が10年以上のものに限る)の借り入れ残高があること。
(3)(1)の譲渡にかかる譲渡損失があること。
(4)譲渡資産の条件は、譲渡する年の1月1日において所有期間が5年を超える今現在住んでいる住居やその土地ならOK。もし居住していなくても住まなくなってから3年を経過する日が属する年の12月31日までに譲渡される住居やその土地の場合もOK。また、譲渡する住居が災害により滅失した場合に引き続き所有していて5年を超えた譲渡資産で災害後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する住居が立っていたであろう土地等の場合もOK。
もちろん適用除外になる条件もあります。
*損益通算する年の前年以前3年間で他の特定居住用財産の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けていること。
*譲渡した年の前年または前々年において行った資産の譲渡について他の特例を受けていること。
居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
居住用財産の譲渡所得の3000万円の特別控除
特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
特定の居住用財産の交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
*譲渡した年またはその年の前年以前3年以内に居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例の適用を受けていること。
などがあれば適用除外になります。
2)の場合は1)とほぼ同様です。
違う点は、次に購入し入居する住居が譲渡損失が出た日の前年の1月1日から、譲渡損失が出た日の翌年の12月31日までの間にされること、
そしてその所有あるいは区分所有する床面積が50m2以上であること。そしてその買換えた住居にかかる住宅ローン(償還期間10年以上)があること。
繰越控除する場合には、年間所得が3000万円を超える年分については対象外になるということである。
詳細なデータの最終確認は必ず国税庁のホームページにて行って下さい、状況の急激な変化も起こり得ますから。
不動産の売却で損失がでた場合に確定申告で取り戻す
平成29年12月31日までの譲渡の分は他の所得との損益通算の適応が受けられます。(今後、平成29年以降に適応が延ばされるかどうかは今の時点では不明です。)
もし、条件が合っていた場合は必要書類をそろえて確定申告してください。
間に合えば、3年間の繰越控除も勝取ることもできますね。
確定申告の用紙は(初回は)申告書Bの第一表、第二表、申告書(分離課税用)第三表、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越対象となる金額の計算書が必要です。
繰越控除の時は申告書Bの第一表、第二表だけでOKです。(税務署に最初の書類にてデータが保管されています)
まとめ
この損益通算の特例も平成29年12月31日で終わります。もっと延長すれば、少しでも損失を取り戻すことができます。そうなればいいですね。