親から土地付きの建物を譲る代わりに、残りの住宅ローンを払ってほしいと言われた人はいるでしょう。
その場合の課税のされ方はどうなるのか悩むことになります。
実は状況に応じて、課税のされ方が違ってくるんです。
住宅ローンが残っている不動産の贈与 その課税のされ方と計算例について解説します。
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住宅ローンが残っている不動産の贈与
土地付きの建物(資産)と一緒に、残りの住宅ローンを支払う(債務)という、プラスの部分とマイナスの部分を織り交ぜた贈与のことを、負担付き贈与といいます。
普通の贈与財産の評価は「財産評価基本通達」により行われます。
「財産評価基本通達」とは、国税庁が規定している財産の価額の計算方法についての通達です。
相続税などを計算する時に、対象財産の価額評価方法や、非上場株式の評価方法なども記載されていて、土地や家屋に関する権利の他、株式やその他の財産にわたって細かく価額計算方法がわかるようになっています。
しかし、負担付き贈与になると、その通達ではなく、その時の通常の取引価格(時価)により計算されることになります。
これは、かつて相続税評価額が時価よりもかなり低く設定されていたことがあって、現状と大きく違っていたことから改められたものです。
低く設定された評価額が債務と同額になり、財産を負担付き贈与とすれば贈与税がかからなくなるという納税回避を避けるために取り扱いを変えることになりました。
その課税のされ方について
それでは実際の課税のされ方についてですが。
大きく分けて2通りになります。
1)贈与者の利益になる場合
2)贈与されるものの利益になる場合
この2通りになります。
1)の場合には、
負担付贈与をすると、贈与をする人が支払うべき借金が、贈与を受けた人に移動し、贈与をする予定だった人はその支払い義務から解放されます。
これは、贈与財産を債務相当額で売却して、そのお金で借金を返したのと同じことになります。
そこで、贈与する人に対して債務相当額を収入金額とみなして、譲渡所得税を課することにしています。
贈与を受けた人には財産の価格と債務の価格が同一のために贈与税はかかりません。
2)の場合には、
債務の価格よりも価値のある財産を贈与された場合、贈与する方にはメリットがないため譲渡所得税はかかりませんが、代わりに財産を贈与される側に、財産の価格から債務の価格を引いた部分に対し贈与税を課すことになります。
このようにすることで納税逃れがないようにできるわけです。
計算例について
負担付き贈与の計算例
1)父より時価2000万円の土地付き家屋の贈与を受ける代わりに、父の銀行借入金800万円を負担することにした22歳の息子の場合の課税
息子に対し贈与税が課されます。
贈与を受けたときの時価額2000万円から負担額800万円を控除した価額1200万円が贈与税の課税対象額になります。
課税価額(みなし贈与額)=2000万円-800万円=1200万円
贈与税の課税標準額=1200万円-110万円=1090万円
贈与税額は1090万円に贈与税の超過累進課税率を適用して次のようになります。
贈与税額=1090万円x40%-190万円=436万円ー190万円=246万円
2)父より時価1億6500万円の土地付の家屋(6年間所有、1億円(取得価額)、譲渡費用500万円、別荘として所有)の贈与を受ける代わりに、父の銀行借入金1億5500万円を負担することにした22歳の息子の場合の課税
息子には贈与税はかからなくて、父に対し、長期譲渡所得税がかかります。
課税長期譲渡所得金額=1億6500万円ー1億円ー500万円=6000万円
1.所得税 6000万円x15%=900万円
2.復興特別所得税 900万円x2.1%=18万円9000円
3.住民税 6000万円x5%=300万円
長期譲渡所得税額=900万円+18万9000円+300万円=1218万9000円
まとめ
財産を債務付で贈与することを負担付き贈与といいます。
その財産の価額は時価で計算され、贈与する側に利益がある場合はその債務の負担がなくなった分に対しての譲渡所得税を贈与する側に課し、贈与される側に利益がある場合はその差額に対する贈与税が課されることになります。