ニュースで「GDPが増えた」「日本のGDPは世界で何位」といった言葉を見ても、「そもそもGDPって何のこと?」と感じる方は多いのではないでしょうか。
GDPは、国の経済の大きさや動きを知るために使われる代表的な指標です。ただ、「国内総生産」「付加価値」といった少し難しい言葉が出てくるため、最初はわかりにくく感じるかもしれません。
簡単にいうと、GDPは「一定期間に、その国の中で新しく生み出された価値の合計」です。
この記事では、GDPの意味を初めて学ぶ方にもわかるように、身近な例を使いながらやさしく説明していきます。
「GDPが高いと何がいいの?」「名目GDPと実質GDPは何が違うの?」といった疑問についても順番に見ていきましょう。
GDPの意味とは?まずは簡単にわかりやすく解説
GDPとは、簡単にいうと「一定期間に国内で生み出された価値の合計」です。
国の中でどれくらい活発にモノやサービスが生み出されたのかを見るために使われ、国の経済規模を表す代表的な指標のひとつです。
たとえば、
・パン屋さんがパンを作って販売する
・美容院でヘアカットをする
・会社がソフトウェアを開発する
・工場で自動車を生産する
といった経済活動によって、新しい価値が生み出されています。
こうした価値を一定期間について合計したものがGDPです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券でも、GDPは一定期間内に国内で産出された「付加価値」の総額で、国の経済活動の状況を示すものと説明されています。
ここから、もう少し詳しく見ていきましょう。
GDPは「国内総生産」のこと
GDPは、英語の
Gross Domestic Product(グロス・ドメスティック・プロダクト)
の頭文字を取った言葉です。
日本語では「国内総生産」といいます。
言葉を3つに分けると、意味をイメージしやすくなります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 国内 | 日本なら、日本国内で行われた経済活動 |
| 総 | 全部を合わせること |
| 生産 | モノやサービスを生み出すこと |
つまり国内総生産とは、ざっくりいえば「国内で生み出された価値を全部合わせたもの」と考えるとわかりやすいでしょう。
ここで大切なのが「国内」という部分です。
GDPでは、会社の国籍ではなく、どこの国で生産されたかを基準に考えます。
たとえば、日本企業が日本国内で生み出した価値は日本のGDPに含まれます。
一方、日本企業であっても海外の工場などで生み出した価値は、基本的に日本のGDPには含まれません。
反対に、海外企業であっても日本国内で生産活動を行って生み出した価値は、日本のGDPに含まれます。
「日本の会社が作ったもの」ではなく、「日本国内で生み出されたもの」と覚えておくのがポイントです。
GDPが表しているのは国内で生み出された「付加価値」の合計
GDPを理解するときに、少しわかりにくいのが「付加価値」という言葉です。
GDPは、国内で売られたモノやサービスの金額を、そのまますべて足しているわけではありません。
基本的には、
生み出された価値 − 生産するために使った原材料などの価値
を考えます。
この、新しく加わった価値が「付加価値」です。
内閣府も、生産面から見たGDPについて、モノやサービスの産出額から原材料などの「中間投入」を差し引いたものと説明しています。
なぜわざわざ付加価値を計算するのでしょうか。
理由は、同じ商品の価値を何度も数えないためです。
たとえば、小麦がパンになるまでには、
小麦を作る
↓
小麦粉にする
↓
パンを焼く
↓
お店で販売する
というように、いくつもの段階があります。
それぞれの販売金額をすべてそのまま足してしまうと、小麦などの価値を何度も数えることになってしまいます。
そこでGDPでは、それぞれの段階で新しく生み出された価値だけを足していきます。
これが「付加価値を合計する」という意味です。
身近な例で考えるとGDPの意味がわかりやすい
付加価値について、パン屋さんを例に考えてみましょう。
たとえば、パン屋さんが小麦粉などの材料を100円で仕入れてパンを作り、そのパンを300円で販売したとします。
わかりやすく単純化すると、
300円 − 100円 = 200円
となり、この200円がパン屋さんの生産活動によって新しく加わった価値と考えられます。
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| パンの販売価格 | 300円 |
| 材料などの費用 | 100円 |
| 新しく生み出された付加価値 | 200円 |
実際のGDPの計算はもっと複雑ですが、基本的な考え方は同じです。
パン屋さんだけでなく、工場、スーパー、美容院、運送会社、IT企業など、国内のさまざまな場所で生み出された付加価値を合計してGDPを求めます。
そのため、GDPが大きいということは、基本的には「その国の中で行われている経済活動の規模が大きい」ことを表します。
ここまでを簡単にまとめると、
GDP=一定期間に国内で新しく生み出された付加価値の合計
です。
まずはこの意味を覚えておけば、ニュースでGDPという言葉が出てきたときにも内容を理解しやすくなります。
GDPはどうやって計算する?3つの見方をやさしく解説
GDPは「国内で新しく生み出された付加価値の合計」と説明しましたが、実はGDPにはいくつかの見方があります。
代表的なのが、
・生産から見る
・支出から見る
・所得から見る
という3つの考え方です。
一見すると別々の数字に思えますが、理論上はどの方向から見ても同じGDPになると考えられています。
これを「三面等価」といいます。
難しく感じるかもしれませんが、基本はシンプルです。
誰かがモノやサービスを作れば、それを誰かが買い、その売上は最終的に誰かの所得になります。
つまり、「作る」「使う」「受け取る」という3つの方向から、同じ経済活動を見ているということです。
生産から見る:国内で生み出された付加価値を合計する
まずは、これまで説明してきた「生産」の考え方です。
生産面から見たGDPでは、国内の企業やお店などが生み出した付加価値を合計します。
たとえば、あるパン屋さんが材料を100円で仕入れ、300円でパンを販売したとします。
単純化すると、
300円 − 100円 = 200円
となり、この200円が新しく生み出された付加価値です。
同じように、
・農業
・製造業
・小売業
・運送業
・飲食業
・美容院
・ITサービス
など、国内のさまざまな産業で生まれた付加価値を合計していきます。
この方法では、原材料や部品などをそのまま何度も数えないことがポイントです。
たとえば、自動車を作る場合には鉄やタイヤ、ガラスなど、さまざまな材料や部品が使われます。
それらの価格と完成した自動車の価格をすべてそのまま足してしまうと、同じ価値を重複して数えることになります。
そこで、各段階で新しく生み出された価値だけを計算します。
支出から見る:消費や投資など使われたお金から考える
GDPは、「国内で何にお金が使われたか」という方向からも見ることができます。
これが支出面から見たGDPです。
大きく分けると、次のような項目から考えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 個人消費 | 家庭がモノやサービスを購入するために使ったお金 |
| 企業などの投資 | 企業が工場や設備、住宅などに使ったお金 |
| 政府支出 | 国や自治体による公共サービスなどへの支出 |
| 輸出 | 海外に販売したモノやサービス |
| 輸入 | 海外から購入したモノやサービス |
支出面のGDPは、簡略化すると、
個人消費 + 投資 + 政府支出 + 輸出 − 輸入
という形で表されます。
なぜ輸入を引くのかというと、GDPは国内で生み出された価値を表す数字だからです。
たとえば、日本で海外製のバッグを購入すると、その購入金額は個人消費には含まれます。
しかし、そのバッグは海外で生産されています。
そのままでは日本国内で生み出された価値として数えてしまうため、輸入分を差し引いて調整します。
一方、日本国内で作られた商品を海外の人が購入した場合は、国内で生み出された価値なので輸出としてGDPに含まれます。
ニュースで「個人消費が伸びた」「設備投資が減った」といった言葉が出てくるのは、こうした支出の動きがGDPにも関係しているからです。
所得から見る:給与や企業の利益など分配されたお金から考える
GDPは、経済活動によって生まれた価値が誰の所得になったかという方向から見ることもできます。
たとえば企業が商品を販売して得たお金は、すべてがそのまま企業に残るわけではありません。
従業員への給与になったり、企業の利益になったりします。
さらに、生産活動に関係する税金などにも分配されます。
つまり、生産によって新しく生み出された価値は、最終的には、
・働く人の給与
・企業の利益
・その他の所得
などとして誰かに分配されます。
これが所得面から見たGDPの考え方です。
たとえば、パン屋さんが200円の付加価値を生み出したとします。
その200円は、店員の給与やお店の利益などに分かれていきます。
生み出された価値が消えてしまうわけではなく、最終的には誰かの所得になると考えるとわかりやすいでしょう。
生産・支出・所得は同じ金額になる「三面等価」
ここまで、
生産・支出・所得
という3つの方向からGDPを見てきました。
理論上、この3つは同じ金額になります。
この考え方を「三面等価の原則」といいます。
たとえば、パン屋さんが300円のパンを販売したとします。
買う側から見ると「300円を使った」という支出です。
売る側から見ると「パンを生産して販売した」という生産です。
そして、その売上から材料費などを除いた価値は、給与や利益などの所得になります。
つまり、
生産された価値 = 使われたお金 = 分配された所得
という関係になります。
| 見方 | 何を見る? |
|---|---|
| 生産面 | どれだけ付加価値が生み出されたか |
| 支出面 | 生み出されたモノやサービスにどれだけお金が使われたか |
| 所得面 | 生み出された価値が給与や利益などにどう分配されたか |
実際の統計では、さまざまな資料を使って計算するため、完全にぴったり一致するとは限らず、統計上の調整が行われます。
ただ、GDPの基本を理解するときは、
「作った価値」「使ったお金」「受け取った所得」は、同じ経済活動を違う方向から見たもの
と覚えておけば十分です。
この考え方がわかると、GDPは単に「国が発表する大きな数字」ではなく、私たちの買い物や企業の活動、働いて得る給与などともつながっていることが見えてきます。
名目GDPと実質GDPの違いは?
GDPについてニュースを見ていると、「名目GDP」と「実質GDP」という2つの言葉が出てくることがあります。
どちらもGDPですが、大きな違いは物価の変化を考慮するかどうかです。
簡単に整理すると、次のようになります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 名目GDP | その時点の価格で計算する |
| 実質GDP | 物価の変化による影響を取り除いて計算する |
なぜ2種類のGDPが必要なのでしょうか。
それは、GDPの金額が増えていても、実際に生産されたモノやサービスが増えたとは限らないからです。
物価が上がっただけでも、金額で表したGDPは大きくなる可能性があります。
名目GDPと実質GDPの違いを知っておくと、「数字ではGDPが増えているけれど、本当に経済活動が活発になったの?」という点まで考えられるようになります。
名目GDPはその時点の価格で計算する
名目GDPとは、その時点で実際に取引されている価格を使って計算したGDPです。
たとえば、ある商品だけが生産されていると仮定して、次のように考えてみましょう。
| 1年目 | 2年目 | |
|---|---|---|
| 商品の価格 | 100円 | 120円 |
| 生産した個数 | 100個 | 100個 |
| 金額 | 10,000円 | 12,000円 |
生産した個数はどちらの年も100個なので、作った量そのものは増えていません。
ところが、価格が100円から120円になったため、金額は10,000円から12,000円に増えています。
このように、その時点の価格で計算すると、物価が上がったことによってGDPが増える場合があります。
名目GDPには、モノやサービスの生産量の変化だけでなく、物価の変化も反映されるということです。
実質GDPは物価の変動による影響を取り除いて考える
実質GDPは、物価の変化による影響を取り除いて、経済活動の変化を見やすくしたGDPです。
先ほどの例では、1年目も2年目も生産した商品は100個でした。
価格だけが100円から120円に上がっています。
名目GDPでは金額が増えますが、実際に作られた商品の量は変わっていません。
そこで、物価変動の影響を取り除いて考えます。
そうすることで、
「値段が上がったからGDPが増えたのか」
それとも、
「実際に生産されるモノやサービスが増えたのか」
を区別しやすくなります。
たとえば、物価が大きく上昇している時期には、名目GDPも増えやすくなります。
しかし、その数字だけを見て「経済がそれだけ成長した」と判断すると、実態をつかみにくくなることがあります。
実質GDPは、こうした物価の影響を除いて経済の動きを見るために使われます。
経済が本当に成長したかを見るなら実質GDPに注目
経済が前の年や前の期間と比べてどのくらい成長したのかを見るときには、実質GDPの動きがよく利用されます。
物価が上昇しただけで名目GDPが増えているのか、それとも実際に生産活動が拡大しているのかを区別しやすいからです。
たとえば、
名目GDPは増加している
↓
しかし物価も大きく上昇している
↓
実質GDPはそれほど増えていない
ということもあります。
この場合、金額で見た経済規模は大きくなっていますが、モノやサービスの生産という面では、それほど成長していない可能性があります。
一方で、名目GDPにも意味があります。
名目GDPは、その時点の実際の価格で表された経済規模を見るときに役立つからです。
そのため、「名目GDPと実質GDPのどちらが正しいの?」と考える必要はありません。
何を知りたいかによって使い分けることが大切です。
| 知りたいこと | 注目したいGDP |
|---|---|
| その時点の金額で経済規模を知りたい | 名目GDP |
| 物価の影響を除いて経済の成長を見たい | 実質GDP |
ニュースで「GDPが○%成長した」という話題を見たときには、名目GDPなのか実質GDPなのかにも注目してみると、数字の意味をより正確に理解できます。
「GDPが増えた」という数字だけを見るのではなく、「物価が上がった影響なのか、それとも経済活動そのものが拡大したのか」と考えることがポイントです。
GDPが増える・減るとはどういう意味?
GDPの意味がわかってくると、次に気になるのが「GDPが増えたり減ったりすると、私たちの生活に何が起こるの?」ということではないでしょうか。
GDPは、国内で生み出された付加価値の合計です。
そのため、GDPの増減を見ることで、国内の経済活動が拡大しているのか、縮小しているのかを知る手がかりになります。
ただし、GDPが増えれば必ず生活が豊かになり、減れば必ず暮らしが苦しくなる、というほど単純ではありません。
GDPはあくまでも、経済の状態を知るための指標のひとつです。
ここでは、GDPの増減が何を意味するのかを見ていきましょう。
GDP成長率を見ると経済が成長しているかがわかる
GDPのニュースでよく登場するのが「GDP成長率」です。
GDP成長率とは、ある期間のGDPが、その前の期間と比べてどのくらい増えたり減ったりしたのかを割合で表したものです。
たとえば、わかりやすく単純化して考えてみましょう。
前年のGDPが500兆円で、今年のGDPが510兆円になった場合、GDPは10兆円増えています。
増加した10兆円を前年の500兆円と比べると、
(510兆円 − 500兆円)÷ 500兆円 × 100 = 2%
となります。
この例では、GDP成長率は2%です。
反対にGDPが前年より減れば、成長率はマイナスになることがあります。
| GDPの動き | 基本的な見方 |
|---|---|
| GDPが増える | 国内の経済活動が拡大している |
| GDPが減る | 国内の経済活動が縮小している |
ただし、前の章で説明したように、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」があります。
物価が上がった影響を除いて経済の成長を見たい場合には、実質GDPの成長率が重要な手がかりになります。
また、GDPは前年だけでなく、前の四半期と比較されることもあります。
ニュースでGDP成長率を見るときは、「何%だったか」だけでなく、何と比較した数字なのかも確認すると理解しやすくなります。
GDPが増えると企業や私たちの暮らしはどうなる?
GDPが増えているときは、一般的に国内で生産されたモノやサービスなどの付加価値が増えていることを示します。
たとえば、
・個人の消費が増える
・企業の売上や生産が伸びる
・企業が設備投資を増やす
・雇用が増える
といった動きが経済全体で広がれば、GDPが増える要因になります。
企業の業績が良くなれば、従業員の給与や賞与が増えたり、新しく人を雇ったりする可能性もあります。
所得が増えれば買い物や旅行などにお金を使いやすくなり、それが企業の売上につながることもあります。
企業の活動が活発になる
↓
所得や雇用に良い影響が出る
↓
消費が増える
↓
企業の生産や売上につながる
というように、経済活動が広がっていくことがあります。
ただし、GDPが増えたからといって、すべての人の給与や暮らしが同じように良くなるわけではありません。
成長している業種とそうでない業種があったり、物価の上昇によって家計の負担が増えたりすることもあります。
そのため、GDPが増えているというニュースを見ても、「自分の生活が楽になっていないのはおかしい」というわけではありません。
GDPは国全体の経済活動を見る数字であり、一人ひとりの暮らしをそのまま表しているわけではないからです。
GDPが減ると必ず景気が悪いとは限らない
GDPが減少すると、国内の経済活動が前の期間より縮小したことを示します。
たとえば、
・消費が落ち込む
・企業の設備投資が減る
・輸出が減少する
・企業が生産を減らす
といったことがGDPを押し下げる要因になります。
こうした状況が続けば、企業の業績や雇用などにも影響が広がる可能性があります。
ただし、GDPが一度減っただけで「景気が悪い」と決めつけるのは早いでしょう。
GDPは、自然災害や一時的な消費の変化、輸出入の動きなど、さまざまな要因によって変動します。
また、四半期ごとのGDPは速報値として発表されたあと、新しい統計データがそろうことで改定されることもあります。
そのため、景気の状態を判断するときには、GDPだけではなく、雇用、賃金、消費、物価、生産など、ほかの経済指標もあわせて見ることが大切です。
つまり、
GDPが増えた=誰もが豊かになった
GDPが減った=すぐに不景気になった
と単純に考えるのではなく、GDPは「経済全体がどちらの方向に動いているのかを知るための大切な手がかり」と考えるとわかりやすいでしょう。
GDPの数字と生活の実感が必ずしも一致しない理由については、このあとさらに詳しく説明します。
GDPが高い国ほど豊かなの?ランキングを見るときの注意点
GDPについて調べていると、「世界GDPランキング」や「日本のGDPは世界何位?」といった情報を目にすることがあります。
GDPランキングは、国ごとの経済規模を比べるときに役立ちます。
ただし、GDPの順位が高い国ほど、国民一人ひとりの暮らしも豊かであるとは限りません。
GDPは基本的に国全体で生み出された付加価値を表すため、人口が多い国ほどGDPが大きくなりやすいという特徴もあります。
ランキングを見るときは、「GDPが何を表している数字なのか」を忘れないことが大切です。
GDPランキングは国全体の経済規模を比べたもの
GDPランキングとは、各国のGDPを比較して、経済規模の大きい国から並べたものです。
国際比較では、各国の名目GDPを米ドルなど共通の通貨に換算して比べることがあります。
そのため、GDPランキングを見ると、
「世界の中で、どの国の経済規模が大きいのか」
を知る目安になります。
ここで注意したいのが、GDPランキングの順位はずっと同じではないことです。
各国の経済成長だけでなく、ドル換算で比較する場合には為替レートの変化も順位や金額に影響します。
たとえば、日本のGDPそのものが急激に小さくなっていなくても、円安によって円をドルに換算したときの金額が小さくなれば、ドル建てのGDPは押し下げられます。
反対に円高になれば、ドル換算した日本のGDPが大きくなる方向に働きます。
そのため、「日本のGDPランキングが上がった・下がった」というニュースを見るときは、経済成長だけではなく為替の影響もあることを覚えておくとよいでしょう。
また、GDPの順位は公表時期や使用する統計によっても異なる場合があります。
「日本は現在○位」と順位だけを覚えるより、GDPランキングは国全体の経済規模を比較するものと理解しておくことが大切です。
GDPが大きくても一人ひとりが豊かとは限らない
GDPランキングを見るときに、もうひとつ注意したいのが人口の違いです。
たとえば、次のような2つの国があるとします。
| A国 | B国 | |
|---|---|---|
| GDP | 1兆円 | 5,000億円 |
| 人口 | 100万人 | 10万人 |
国全体のGDPだけを比べれば、A国のほうがB国より大きくなっています。
しかし、A国は人口も多いため、これだけでは「A国の人のほうが豊かに暮らしている」とは判断できません。
人口が10倍違えば、国全体で生み出されるモノやサービスの量にも大きな差が生まれやすくなります。
つまり、GDPは国全体の経済の大きさを見るのには適していますが、国民一人ひとりの経済的な豊かさをそのまま比較する数字ではないのです。
そこで使われる指標のひとつが「一人当たりGDP」です。
生活水準を比べるときは「一人当たりGDP」も参考になる
一人当たりGDPとは、GDPをその国の人口で割ったものです。
計算方法を簡単に表すと、
一人当たりGDP = GDP ÷ 人口
となります。
たとえば、GDPが500兆円で人口が1億人なら、単純計算した一人当たりGDPは500万円です。
一人当たりGDPを見ることで、人口の違う国同士でも、国民一人当たりに換算した経済規模を比較しやすくなります。
| 指標 | 主にわかること |
|---|---|
| GDP | 国全体の経済規模 |
| 一人当たりGDP | 人口一人当たりに換算した経済規模 |
ただし、一人当たりGDPにも注意点があります。
一人当たりGDPはGDPを人口で割った平均的な数字であり、「国民全員がその金額を所得として受け取っている」という意味ではありません。
所得の分布や物価、住宅費、社会保障、労働時間などは国によって異なります。
そのため、一人当たりGDPが高ければ必ず生活の満足度も高い、とは言い切れません。
GDPランキングを見るときには、
国全体の経済規模を知りたい → GDP
人口の違いを考慮して比べたい → 一人当たりGDP
というように、目的に合わせて数字を見ることがポイントです。
そして、どちらも私たちの「暮らしの豊かさ」をすべて表す数字ではありません。
GDPは何でもわかる万能な数字ではなく、経済を見るためのひとつのものさしとして利用するのが適切です。
GDPとGNP・GNIは何が違う?
GDPについて調べていると、「GNP」や「GNI」という似た言葉を目にすることがあります。
アルファベットばかりで混乱しやすいのですが、違いを理解するポイントは「国内を基準にするのか、人や企業などを基準にするのか」です。
まずは、大まかな違いを整理してみましょう。
| 指標 | 日本語 | 考え方のポイント |
|---|---|---|
| GDP | 国内総生産 | 国内で生み出された付加価値を見る |
| GNP | 国民総生産 | 国民を基準に生産された付加価値を見る |
| GNI | 国民総所得 | 国民が国内外から得た所得を見る |
この3つを一度に覚える必要はありません。
まずは「GDPは国内が基準」という点を押さえておけば、違いを理解しやすくなります。
GDPは「国内」、GNPは「国民」を基準に考える
GDPとGNPの大きな違いは、何を基準に経済活動を見るかという点です。
GDPは「国内」を基準にします。
つまり、日本のGDPであれば、基本的には日本国内で生み出された付加価値を計算します。
一方、GNPは「国民」を基準に考える指標です。
GNPは英語の「Gross National Product」の略で、日本語では「国民総生産」といいます。
たとえば、日本企業が海外で経済活動をしている場合を考えてみましょう。
GDPでは「どこで生産されたか」が重要なので、海外で生み出された分は日本のGDPには含まれません。
反対に、外国の企業が日本国内で生み出した付加価値は、日本のGDPに含まれます。
つまり、
GDP → どこで生み出されたかを見る
GNP → 誰が生み出したかに注目する
と考えると、違いをイメージしやすくなります。
現在はGNPよりGNI(国民総所得)が使われることが多い
GNPと一緒に覚えておきたいのがGNIです。
GNIは「Gross National Income」の略で、日本語では「国民総所得」といいます。
GNIは、国内で生み出された所得に加えて、海外との間で受け取ったり支払ったりした所得も考慮した指標です。
簡単に表すと、
GNI = GDP + 海外から受け取った所得 − 海外へ支払った所得
というイメージです。
たとえば、日本の企業や居住者が海外への投資などから受け取る所得がある一方、日本国内で活動する海外の企業や居住者などに支払われる所得もあります。
こうした海外との所得の受け払いをGDPに加えて考えるのがGNIです。
なお、昔の経済ニュースや学校の授業などで「GNP」という言葉を覚えている方もいるかもしれません。
現在の国民経済計算では、所得に着目したGNI(国民総所得)が使われています。
そのため、GDPと似た指標をニュースなどで見る場合は、GNPよりGNIを目にする機会が多いでしょう。
GDP・GNI・一人当たりGDPの違いを簡単に整理
GDP、GNI、一人当たりGDPは、どれも経済について考えるときに使われますが、知りたい内容によって見る指標が変わります。
| 知りたいこと | 参考になる指標 |
|---|---|
| 国内の経済規模を知りたい | GDP |
| 国内外から得た国民の所得を見たい | GNI |
| 人口の違いを考慮して経済規模を比べたい | 一人当たりGDP |
たとえば、日本国内の経済活動がどのくらいの規模なのかを知りたいならGDPが適しています。
一方、海外との所得のやり取りまで含めて考えたい場合にはGNIが役立ちます。
国ごとの人口の違いを考慮して比較したい場合には、一人当たりGDPも参考になります。
似たアルファベットが並ぶため難しく見えますが、最初から細かな計算方法まで覚える必要はありません。
GDP=国内で生み出された付加価値
GNI=国内外から得た所得に注目
一人当たりGDP=GDPを人口で割ったもの
という違いを押さえておけば、経済ニュースを読むときにも混乱しにくくなります。
特に今回の記事で覚えておきたいのは、GDPの「D」がDomestic(国内)を意味していることです。
「GDPは国内が基準」と覚えておけば、GNIなど似た指標が出てきたときにも違いを整理しやすくなるでしょう。
GDPだけでは「暮らしの豊かさ」をすべて判断できない
GDPは、国の経済規模や経済の動きを知るうえで大切な指標です。
ただし、GDPが大きい、あるいはGDPが増えているからといって、私たち一人ひとりの暮らしが必ず豊かになっているとは限りません。
なぜなら、GDPが主に表しているのは国内で行われた経済活動によって生み出された付加価値であり、幸福度や暮らしやすさなどを直接測っているわけではないからです。
「GDPが増えているのに、生活が豊かになった感じがしない」と感じることがあっても、不思議ではありません。
GDPでわかることと、GDPだけではわからないことを分けて考えてみましょう。
GDPに表れにくい活動もある
私たちの生活には価値があっても、GDPにはそのまま表れない活動があります。
わかりやすい例が、家庭内で行う家事です。
たとえば、自宅で家族のために料理を作ったり、掃除をしたりしても、通常はお金の取引が発生しません。
一方、家事代行サービスを利用して料金を支払えば、市場で取引されたサービスとしてGDPに反映されます。
同じように「部屋がきれいになる」という結果につながっても、市場でお金を介して取引されたかどうかによって、GDPへの表れ方が変わるのです。
また、ボランティア活動なども、社会にとって大切な価値を生み出していても、その価値のすべてをGDPで表せるわけではありません。
そのため、
GDPに含まれない=価値がない
という意味ではありません。
GDPは経済活動を金額で捉えるための指標であり、社会に存在するすべての価値を数字にしたものではないことを覚えておきましょう。
GDPが増えても生活が豊かになったと感じるとは限らない
GDPが増えているのに、「自分の生活はそれほど楽になっていない」と感じることもあります。
その理由のひとつは、GDPが国全体の経済活動を表す数字だからです。
たとえば、一部の産業や企業が大きく成長してGDPが増えたとしても、その恩恵がすべての人に同じように広がるとは限りません。
また、給与が増えていても、それ以上に食品や光熱費などの物価が上昇すれば、家計に余裕ができたと感じにくいこともあります。
さらにGDPだけでは、
・所得がどのように分配されているか
・自由に使える時間がどのくらいあるか
・安心して暮らせる環境があるか
・健康や教育の状況はどうか
・自然環境が守られているか
といった暮らしのさまざまな面を十分に判断することはできません。
そのため、国や人々の豊かさを考えるときには、GDPだけでなく、所得や物価、雇用、健康、教育など、ほかの情報もあわせて見る必要があります。
GDPは経済を見るための一つのものさしとして考えよう
GDPだけでは暮らしの豊かさをすべて測れないのであれば、「GDPには意味がないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、そういうわけではありません。
GDPは、国内の経済活動の規模や、その変化を把握するための重要な指標です。
たとえば、
・国内の経済規模はどのくらいか
・経済活動が拡大しているか、縮小しているか
・個人消費や設備投資などがどのように動いているか
・ほかの国と比べて経済規模はどのくらいか
といったことを考える際に役立ちます。
大切なのは、GDPに何でも答えを求めないことです。
たとえば、体の状態を知るときに体重だけを見ても、健康状態のすべてがわからないのと似ています。
体重は健康を考えるためのひとつの情報ですが、血圧や睡眠、運動など、ほかの情報も必要です。
GDPも同じように、
「経済を見るための大切なものさしのひとつ」
と考えるとわかりやすいでしょう。
GDPが高いか低いかだけで「良い国」「悪い国」と判断するのではなく、GDPが何を測っていて、何を測っていないのかを理解して数字を見ることが大切です。
ここまで理解できれば、GDPについてのニュースを見たときにも、数字だけに振り回されず、その数字が何を意味しているのかを考えやすくなります。
GDPの意味についてよくある疑問
ここまでGDPの基本から、名目GDP・実質GDP、GDPランキングなどについて説明してきました。
最後に、GDPについて初めて学ぶときに疑問に感じやすいポイントをQ&A形式で整理します。
GDPは簡単にいうと何?
GDPを簡単にいうと、「一定期間に国内で新しく生み出された付加価値の合計」です。
GDPは「Gross Domestic Product」の略で、日本語では「国内総生産」といいます。
たとえば、日本国内では工場で商品を作ったり、お店でサービスを提供したりと、さまざまな経済活動が行われています。
そこで新しく生み出された付加価値を合計したものがGDPです。
難しい言葉をいったん抜きにして覚えるなら、
GDP=その国の経済活動の大きさを見るための数字
と考えるとわかりやすいでしょう。
ただし、「日本人や日本企業が世界中で生み出したもの」を単純に合計するわけではありません。
GDPの「D」はDomestic(国内)なので、どこで生み出されたかがポイントです。
GDPが高いと何がいいの?
GDPが大きいということは、基本的には国内で行われている経済活動の規模が大きいことを表します。
また、実質GDPが継続的に成長していれば、物価変動の影響を除いて見た経済活動が拡大していることを示します。
企業の生産や投資、個人消費などが活発になれば、雇用や所得に良い影響が広がる可能性もあります。
ただし、
GDPが高い=すべての人が豊か
という意味ではありません。
人口が多ければ国全体のGDPも大きくなりやすいため、国民一人当たりの経済規模を比べたい場合には「一人当たりGDP」も参考になります。
さらに、所得の分配や物価、健康、教育、暮らしやすさなど、GDPだけではわからないこともあります。
GDPの高さは、国の豊かさを考えるための材料のひとつとして見るのがよいでしょう。
GDPと経済成長率は同じ意味?
GDPと経済成長率は同じものではありません。
GDPは経済活動の規模を表す数字で、経済成長率はその規模がどのくらい増えたり減ったりしたかを表す割合です。
たとえば、前年のGDPが500兆円で今年が510兆円になった場合、GDPは10兆円増えています。
この増加分を前年のGDPと比べると、成長率は2%です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| GDP | 一定期間に国内で生み出された付加価値の合計 |
| 経済成長率 | GDPが前の期間からどのくらい増減したかを表す割合 |
つまり、GDPを「経済の大きさ」と考えるなら、経済成長率は「その大きさがどのくらい変化したか」を見る数字と考えるとわかりやすいでしょう。
ニュースでは名目GDPと実質GDPのどちらを見ればいい?
名目GDPと実質GDPのどちらを見るべきかは、何を知りたいのかによって変わります。
その時点の価格で経済規模を知りたい場合は、名目GDPが参考になります。
一方、物価の上昇や下落による影響を除いて、経済活動そのものがどのくらい変化したかを知りたい場合には、実質GDPが役立ちます。
| 知りたいこと | 見るGDP |
|---|---|
| その時点の金額で見た経済規模 | 名目GDP |
| 物価変動の影響を除いた経済の成長 | 実質GDP |
特に「日本経済は成長したのか」というニュースを見るときは、実質GDPや実質GDP成長率に注目すると、物価の影響を除いた動きを理解しやすくなります。
ただし、名目GDPが重要ではないという意味ではありません。
名目と実質は目的が違うため、「どちらの数字について報道されているのか」を確認する習慣をつけると、GDPのニュースがぐっとわかりやすくなります。
GDPの意味をわかりやすくまとめると
GDPとは、「一定期間に国内で新しく生み出された付加価値の合計」です。
英語の「Gross Domestic Product」の略で、日本語では「国内総生産」といいます。
最初は難しく感じる言葉ですが、ポイントを整理するとそれほど複雑ではありません。
・GDPは国内の経済規模を知るための代表的な指標
・商品やサービスの売上を単純に足すのではなく、新しく生み出された「付加価値」を考える
・GDPは生産・支出・所得という3つの方向から見ることができる
・名目GDPはその時点の価格、実質GDPは物価変動の影響を取り除いて考える
・GDP成長率を見ると、経済活動がどのくらい拡大・縮小したかを把握しやすい
・GDPランキングは国全体の経済規模を比較するもの
・一人当たりの経済規模を見る場合は「一人当たりGDP」も参考になる
・GDPだけで暮らしの豊かさのすべてを判断することはできない
特に最初に覚えておきたいのは、
GDP=国内で新しく生み出された価値の合計
という意味です。
ニュースで「GDPが増加した」と聞いたら、国内で生み出されたモノやサービスの付加価値が全体として増えた、と考えるとイメージしやすくなります。
さらに、「名目なのか実質なのか」「前の年や前の四半期と比べてどう変化したのか」に注目すると、経済ニュースをより深く理解できるようになります。
一方で、GDPが増えたからといって、すべての人の給与が増えたり、暮らしが豊かになったりするとは限りません。
GDPは、幸福度や暮らしやすさまで含めて測る数字ではないからです。
そのため、GDPは「国の経済を見るための大切なものさしのひとつ」として考えるのがおすすめです。
GDPという言葉を難しい経済用語として丸暗記するのではなく、「国内でどのくらい新しい価値が生み出されたのかを見る数字」と理解しておけば、GDPランキングや経済成長率などのニュースもぐっと読みやすくなるでしょう。

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