地方公共団体の住民であれば課税される身近な税金が住民税です。
個人だけでなく、会社などの法人も地方公共団体の一員として行政サービスを受けているという考えにより、住民税には個人に課される「個人住民税」と法人に課される「法人住民税」があります。
今回は個人住民税について考えることにします。
住民税とは 納める税額の求め方と納める時期や方法について紹介します。
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住民税とは
住民税という言葉は、法律上の言葉ではなく、普通は道府県民税(都民税を含む)と市町村民税(特別区民税を含む)を合わせて住民税と呼んでいます。
個人の住民税は前年の所得に対して1月1日現在の住所地で課税されることになり、所得の額に応じて課税される所得割などの部分と、所得金額に関係なく個人が等しく負担する均等割の部分からなっています。
住民税の場合は所得税と違い、都道府県や市区町村が税額を計算し、納税者に通知することにより徴収されることになる賦課課税方式を用いています。
なので納税者は、送付された納税通知書に記載された金額を納付すればいいことになります。
納める税額や時期や方法とは
住民税の所得割の部分の額を導き出す基本となる所得金額の計算方法は、所得税の方法とほぼ同じです。
給与所得や不動産所得など各種の所得を合計して所得控除をして求めます。(給与所得は給与所得控除をして算出されます)
所得控除の額は以下のようです。
基礎控除、配偶者控除(一般)、扶養控除(一般):33万円
配偶者控除(70歳以上):38万円
参考記事⇒配偶者控除とは 控除の対象となる配偶者の範囲と配偶者控除額について
配偶者特別控除:最高33万円
参考記事⇒配偶者特別控除とは 配偶者の適用の条件と配偶者特別控除額について
扶養控除(老人扶養親族):38万円
扶養控除(特定扶養親族、老人扶養親族のうち同居老親等):45万円
参考記事⇒扶養控除とは 控除の対象となる扶養親族の範囲と扶養控除額について
障害者控除:26万円、30万円(特別障害者)、53万円(控除対象配偶者および扶養親族が同居の特別障害者)
参考記事⇒障害者控除とは 障害者の種別とその範囲とそれぞれの控除額について
地震保険料控除:最高2万5000円
生命保険料控除:最高7万円
社会保険料控除:前年に支払った総額
医療費控除: 総医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円または合計所得金額の5%のどちらか多いほう
参考記事⇒医療費控除とは 控除の対象になるものと控除額の計算などについて
勤労学生控除:26万円
参考記事⇒学生アルバイトの所得税 いくらまで無税になる その内容について
寡婦(夫)控除:26万円
特定寡婦控除:30万円
参考記事⇒寡婦(夫)控除とは 対象となる年収や扶養の状態と控除額について
寄付金控除:(所得金額の40%または特定寄付金の額のいずれか少ないほう)- 2000円
参考記事⇒ふるさと納税とは その仕組みと限度額の計算の仕方について
小規模企業共済等掛金控除(個人事業主等自営業者の退職金制度の控除):前年に支払った総額
雑損控除:災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合。一定の金額の控除を受けられる。
参考記事⇒災害にあった時に所得税はどうなる?何を適用する その詳細について
税額控除とは直接税金から差し引くものです。
主なものとして
配当控除(配当所得を総合課税として申告した場合)
外国税額控除(外国で生じた所得を申告し課税された場合、外国でも課税されている)
寄付金特別控除(政党等寄附金特別控除など一部のもの)
調整控除(税源移譲に伴い生じた負担増の調整)
配当割額及び株式譲渡所得割の控除(源泉徴収選択口座(所得税において源泉徴収を選択した特定口座)内で徴収された場合)
住宅ローン控除(確定申告や年末調整をしていれば申告不要)
などがあります。
参考記事⇒所得控除は税額控除と違うの?各控除の内容と所得税と住民税での額
サラリーマンの場合は、年末調整の時期に源泉徴収票が発行されますが、この内容が勤務先から各住所地の市区町村に送られることになり課税計算されます。
前年の所得が給与所得のみ、所得税で確定申告をした、前年に所得がなかったなどの人は住民税の申告書の提出は必要ありませんが、それ以外の人は提出の必要があります。
住民税には所得割・均等割・利子割・配当割・株式等譲渡所得割の5種類があり、課税対象者や課税方法が異なっています。
所得割額=(前年の総所得金額等-所得控除額)x 税率-税額控除額
税率は 市町村民税6% + 道府県民税4%=10%
均等割額=市町村民税3000円 + 道府県民税1000円=4000円
(なお、平成26年度から平成35年度までの10年間は500円ずつ増額(合計1000円)されています、その増額分は復興特別税として徴収されています。)
利子割額=利子などx5%
公社債や預貯金の利子、公社債投資信託等の収益分配金、抵当証券等の金融類似商品の収益等に対し、収入金額の5%を道府県民税として特別徴収するものです。
特別徴収とは取り扱い金融機関等が納税義務者の利子等から天引きで徴収する方法のことです。これらの利子等は、所得税15.315%と合わせて20.315%の税率で税金が徴収される源泉分離課税となっており、これだけで課税関係は終了します。(平成26年度から平成35年度までの10年間は0.315%の復興特別税が加算されています)
配当割額=特定配当等の額x5%
上場株式等の配当等で特別徴収された分が課税されることになります。(源泉徴収選択口座(所得税において源泉徴収を選択した特定口座)内で徴収)
株式等譲渡所得割=源泉徴収選択口座内における上場株式等の譲渡による所得x5%
源泉徴収選択口座(所得税において源泉徴収を選択した特定口座)内の上場株式等の譲渡所得等に課税されます。
納める時期や方法は
給与所得者であるサラリーマンは6月から翌年の5月までの12回に分けて、毎月の給与から天引きされますようになっています(特別徴収)が、希望により申告した人には、普通徴収といって市区町村から直接個人あてに納税通知書が送られるようになります。
それは4回に分けて納付するのが普通ですが、一括前納とか前期と後期に分けて払ったりすれば市区町村によっては多少の割引の特典があるところもあります。
非課税になる条件とは
なお、専業主婦や学生のように所得のない人や生活保護を受けている人、前年の所得が一定金額以下の人などは住民税が非課税の場合があります。
各自治体によっては計算方法などが異なることもありますから、詳細は各自治体にお問い合わせください。
均等割と所得割ともに非課税
・生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
・障害者、未成年者、寡婦(夫)で前年の合計所得金額が125万円以下の人
(退職所得に対する分離課税に係る所得割を除く)
寡婦(夫)とは夫(妻)と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、又は夫(妻)の生死が明らかでない人。
均等割が非課税
・均等割のみを課すべき人のうち、前年の合計所得金額が一定の基準に従って市町村の条例で定める金額以下の人
一定の基準=(本人、控除対象配偶者および扶養親族の合計数)x A + B
級地区分 | A | B |
1級地 | 35万円 | 21万円 |
2級地 | 31.5万円 | 18.9万円 |
3級地 | 28万円 | 16.8万円 |
35x0.9=31.5、35x0.8=28
例えば、納税者と配偶者と子供1人が1級地に住んでいる場合。
一定の基準= 3 x35 + 21 = 126万円
年収 = 65 + 126 = 191万円 までは均等割は非課税になります。
級地区分は平成29年4月1日現在のものが、厚労省のホームページの生活保護制度の中の「生活保護を受けるための要件及び生活保護の内容」のあたりに情報が載っています。
生活レベルが高そうな地域が1級地(消費とかにかかる費用が高い)、2級地、3級地の順に下がっていきます。
所得割が非課税
総所得金額等の金額が以下の式で出された金額(C)以下のとき。
(控除対象配偶者または扶養親族がいる場合には32万円を加算する)
(本人、控除対象配偶者および扶養親族の合計数)x 35万円 (+ 32万円 )= C
例:本人だけの単身世帯の場合は、1x35=35万円、給与収入=65 + 35 =100万円、100万円以下の場合は非課税。
まとめ
地方公共団体の住民であれば課税される身近な税金が住民税で、所得割・均等割・利子割・配当割・株式等譲渡所得割の5種類があり、課税対象者や課税方法が異なっています。
なお、専業主婦や学生のように所得のない人や生活保護を受けている人、前年の所得が一定金額以下の人などは住民税が非課税の場合があります。