一般の投資家では、1つの株式に対して、それほどたくさんの株式を所有している人は少ないですが。
中には、1つの株式で発行済み株式の大半を所有しているという大口株主もいるかもしれません。
こういう場合は、非上場株式の場合と同じく税金の処理などにおいて特例の適用がないことがわかっています。
株の配当を受け取る 大口株主と非上場株式の場合とその課税処理について紹介します。
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Contents
株の配当を受け取る
株式を所有すると、配当を受け取れることがあります。
それにかかる税率は、平成21年より上場株式等の配当所得については申告分離課税が適用されるようになりました。
この場合、現在では源泉徴収税率が15%(他に住民税が5%)になります。
また、平成22年以後に証券会社が設定する「特定口座」に入れれば、場合によれば確定申告も不要になりました。
これらの特例は譲渡益との損益通算もしてくれるので便利な一面もありますが。
大口株主にも非上場株式に対してもこれらの特例の適用はありません。
大口株主と非上場株式の場合
発行済み株式総数の3%以上(平成23年10月より)を保有している大口株主と非上場株式については、申告分離課税が選択できませんし、証券会社が投資家に代わって株式の売買損益を出したり、税務署に提出してくれたりする制度「特定口座」の適用がないのです。
一旦、上場株式の配当から20.42%の源泉徴収が行われた上で、総合課税により確定申告をしなければなりません。
(20.42%=所得税+復興特別所得税:平成25年1月1日~平成49年12月31日)
確定申告では給与所得や他の所得(不動産所得など)と合算して累進課税制度のもとで、いろんな控除を適応し課税処理されます。
その際に、事前に源泉徴収された額(20.42%)を「所得の内訳(所得税および復興特別所得税の源泉徴収額)」欄に記入し調整します。
ただし、大口株主などであっても少額配当(*)に該当する場合は確定申告不要制度の適応を受けます。
つまりは、確定申告をしなくてもいいし、総合課税で確定申告をしてもいいとのことです。(有利な方を選択することができる)
事前に20.42%の源泉徴収がされているので確定申告で少しは返金されるならしてもいいということです。
*小額配当
1銘柄について1回に支払いを受けるべき金額が、次の計算式による金額以下のものをいいます。
10万円x配当計算期間の月数(最高12ヶ月)÷12
例えば、1月~6月の配当が5万円の場合は、10x6÷12=5万円なので少額配当になります。
大口株主でたくさん稼いでいる人からはたくさん税金をとろうということですね。
非上場株式については、上場しないほどの株式なのだから不利益でもいいということでの対処なのでしょうか。
その辺はよくわからないですが。
なにしろ、稼いでいる場合はしっかり税金はとるよということでしょう。
もちろんこの場合、配当控除が使えますので、それを考慮して処理されることになります。
その課税処理について
大口株主と非上場株式を所有している人は、(少額配当では希望者のみ)
その配当所得は他の総合課税で処理するものと合計され、いろいろ控除された後に、累進課税制度により所得税額が算出されます。
(事前に源泉徴収(20.42%)されている額を控除されます)
(累進課税制度は、所得多い人からはたくさん、少ない人からはそれなりに税金を負担してもらおうという制度です。)
所得税額は以下の所得税額表に当てはめて計算式*(Z)により算出します。
平成27年以降の所得税額表
課税所得金額(A) | 所得税率(B) | 控除額(C) |
≦195万円 | 5% | 0 |
195<≦330万円 | 10% | 9.75万円 |
330<≦695万円 | 20% | 42.75万円 |
695<≦900万円 | 23% | 63.6万円 |
900<≦1800万円 | 33% | 153.6万円 |
1800<≦4000万円 | 40% | 279.6万円 |
4000万円< | 45% | 479.6万円 |
*(Z)所得税額=(A)x(B)-(C)
例:課税所得金額(A)が200万円のとき所得税率(B)は10%で控除額(C)は9.75万円である。すなわち所得税額は200x0.1-9.75=10.25万円
そして総合課税の場合、従来からの配当控除の適用対象になり、所得税額から下記の配当控除額を差し引くことができます。
なので、それほど稼いでいない人なら、配当分に対する税率が結果的に低くなるかもですが。
大口株主である場合それは考えにくいでしょう。
まあ、総合課税になると、この税率以外に健康保険や厚生年金などの料金にも影響するので、よりたくさんとられてしまうことにもなります。
*2017年の税制改正で、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになりました。
これにより、健康保険料などに影響しないことがあります。
参考記事⇒上場株式等の配当および譲渡所得等で、有利な課税方式を所得税や住民税で自由に選択できるようになってます。2017年度税制改正より。
配当控除の額は課税総所得金額により違う税率で計算されます。
所得税の場合をS、住民税の場合をJとすると。
1)課税総所得金額が1000万円以下場合
S:配当所得金額x10%=配当控除額
J:配当所得金額x2.8%=配当控除額
2)課税総所得金額が配当所得金額を加えることで1000万円を超える場合(配当所得金額以外では1000万円以下の場合)
S:配当所得金額(A:配当所得金額のうち1000万円を超えている部分)x5%+配当所得金額(B:A以外の部分)x10%=配当控除額
J:配当所得金額(A:配当所得金額のうち1000万円を超えている部分)x1.4%+配当所得金額(B:A以外の部分)x2.8%=配当控除額
(例)所得税の場合:
配当所得金額300万円、他の課税所得金額合計が800万円では、課税総所得金額が1100万円になります。配当所得金額を加えたことで100万円分が1000万円超の部分になりました。
つまりは、配当所得金額の200万円分は1000万円以下の部分に入り、100万円分は超えた部分にあるため。それぞれの10%と5%の合計が配当控除金額になる。
3)課税総所得金額のうち配当所得金額以外で1000万円を超える場合
S:配当所得金額x5%=配当控除額
J:配当所得金額x1.4%=配当控除額
参考記事⇒上場株式等の配当控除について、それぞれの配当控除率、日本株ETFとは
まとめ
株の配当を受け取る場合、大口株主にも非上場株式に対しても、配当所得については申告分離課税や特定口座の特例は適用されずに、総合課税での処理になります。
この場合、総合課税なので配当控除の適用があります。
参考記事⇒株の配当を受け取る 有利な課税方法の選択とその詳細について
参考記事⇒積立NISAとは 対象となる投資商品はなにがある 普通のNISAとの差は
参考記事⇒ジュニアNISAとは 口座開設するメリットとデメリットについて
参考記事⇒上場株式の譲渡損失があるとき 申告すべき場合と必要がない場合とは
参考記事⇒株式の相続 第三位の相続人しか残っていない場合 その時の注意点について
参考記事⇒マイナス金利下での株主優待について考えると(例:マクドナルドについて)