2024年度の「在職老齢年金」は給与・賞与と年金の計算方法について
在職老齢年金制度は、高齢社員が働きながら社会保険に加入している場合に、年金の一部が減額される仕組みです。2024年度には、この減額基準額が48万円から50万円に引き上げられました。今回は、この変更が給与・賞与と年金の調整にどのように影響するのかを詳しく見ていきます。
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在職老齢年金制度の歴史
在職老齢年金制度は、1965年に導入されました。それ以前は、60歳以上の人が厚生年金に加入していないことが年金受給の条件でした。つまり、60歳までは「給与で生活し、60歳からは年金で生活する」という明確な区分がありました。しかし、この制度の導入により、在職中でも年金を受け取れるようになりました。ただし、在職中の年金額は減額される仕組みになっています。
2024年度の変更点
2024年度の在職老齢年金制度では、報酬と年金の合計が50万円を超えると年金が減額されることになります。この基準額は、現在の厚生年金加入者の平均的な月収に基づいて設定されています。具体的には、標準報酬月額と過去1年間の賞与額を12で割った金額の合計と、年金月額を合わせた金額です。
報酬月額と年金月額の計算方法
「報酬月額」とは、給与の1ヵ月分と賞与の1ヵ月分に相当する額を合わせた金額で、総報酬月額相当額と呼ばれます。具体的には、「標準報酬月額」と「過去1年間の標準賞与額の合計÷12ヵ月」で計算されます。一方、「年金月額」は、老齢厚生年金の報酬比例部分の額を12で割った金額、すなわち基本月額です。
具体的な計算例
例えば、標準報酬月額が28万円で、賞与が年に2回各60万円の場合、総報酬月額相当額は38万円になります(=標準報酬月額28万円+過去1年間の標準賞与額の合計120万円÷12ヵ月)。また、老齢厚生年金の報酬比例部分が年間120万円なら、年金月額は10万円となります(=老齢厚生年金の報酬比例部分の額120万円÷12ヵ月)。この場合、報酬と年金の合計は48万円(=38万円+10万円)であり、50万円を超えないため、年金は減額されません。
次に、標準報酬月額が38万円で賞与が年に2回各60万円の場合を考えます。この場合、総報酬月額相当額は48万円(=標準報酬月額38万円+過去1年間の標準賞与額の合計120万円÷12ヵ月)、年金月額は同じく10万円(=老齢厚生年金の報酬比例部分の額120万円÷12ヵ月)となり、合計58万円(=48万円+10万円)です。この場合、50万円を8万円超過しているため、その半額の4万円が年金月額から差し引かれ、年金は6万円となります。
在職老齢年金制度のメリットとデメリット
この制度は、働きながらでも年金を受け取れるというメリットがありますが、一方で年金が減額されるというデメリットもあります。高齢社員がフルタイムで働く場合、総報酬月額が50万円を超えることが多く、年金が減額される可能性が高いです。そのため、高齢社員は年金が減らされない範囲で働きたいと考えることが多いです。
高齢社員のニーズに応じた給与形態の構築
企業は、高齢社員のニーズに応じた給与形態を構築することが重要です。例えば、給与を調整して年金が減額されないようにする、または賞与の支給タイミングを工夫するなどの方法があります。これにより、高齢社員が働きやすい環境を整えることができ、彼らの経験や知識を最大限に活かすことができます。
2024年度の変更がもたらす影響
2024年度の基準額引き上げは、高齢社員にとって一定のメリットがあります。基準額が50万円に引き上げられたことで、給与と年金の合計が50万円を超えない限り、年金の減額が行われないため、従来よりも多くの年金を受け取れる可能性が高まります。この変更により、働きながらでも年金をより多く受け取りたいと考える高齢社員にとって、より柔軟な働き方が可能になります。
企業に求められる対応策
企業は、高齢社員が働きやすい環境を提供するために、いくつかの対応策を検討する必要があります。例えば、勤務時間の柔軟化や、テレワークの導入などが考えられます。また、給与体系の見直しや、年金減額を回避するためのアドバイスを行うことも重要です。これにより、高齢社員のモチベーションを維持し、企業全体の生産性向上につなげることができます。
まとめ
2024年度に在職老齢年金制度の基準額が48万円から50万円に引き上げられました。この変更により、給与と年金の合計が50万円以下であれば年金の減額は行われません。企業は高齢社員のニーズに合わせた給与体系の構築と柔軟な働き方の提供を検討し、高齢社員が活躍しやすい環境を整えることが重要です。例えば、標準報酬月額が38万円で賞与が年2回各60万円の社員の場合、合計月額が58万円となり、8万円超過するため年金から4万円が差し引かれ6万円が支給されます。これにより企業は高齢者の働き方を支援し、持続可能な経営を目指す必要があります。
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