健康保険の傷病手当金とは 支払い要件と支給額の計算について
健康保険に加入していると、病気やけがなどをした時に保険給付がもらえて負担が軽減されますが、他にもメリットがあるのをご存知でしたか?
そのメリットの1つに傷病手当金制度というのがあります。
健康保険の傷病手当金とは 支払い要件と支給額の計算について紹介します。
Contents
健康保険の傷病手当金とは
健康保険には加入者が病気やけがで働くことができなくなって、給与がもらえなくなったり支給額が下がった場合に、1年6ヶ月間、給与の額の約3分の2相当額(給与が下がった場合は約3分の2になるよう補填してくれます)を支給してくれる傷病手当金という制度があります。
これは、労災の休業補償と同時にはもらえないもので社会保障のセーフティーネットの1つだと言えます。
健康保険に加入していれば、正社員、パートに関係なく、また勤続年数の長短に関係なく一定の基準でに支給されることになります。
なお、加入している健康保険の種類によっては、支給期間が1年6ヶ月より長いケースや、支給額が給与額の3分の2よりも多いケースがありえます。
詳しくは会社の人事担当者か健康保険組合に確認してください。
支払い要件について
支払いをしてもらうには以下の条件があります。
1)業務外の病気やけがのための治療中であること。
仕事中のけがや通勤途中のけがなどは労災保険の適応になるので、健康保険の傷病手当金を受けとることはできません。
2)病気やけがで仕事ができない状態であること。
傷病手当金の受給には、病気やけがで仕事ができない状態であることが必要です。
そのための証明として、主治医の診断を受けて、支給申請書に「労務不能」であるという主治医の意見が必要になります。
その意見とは別に被保険者の業務内容やその他の条件を考慮して最終的に判断されます。
「労務不能」とは病気やけがで仕事ができない状態のことを言います。
3)4日以上仕事を休んでいること。
傷病手当金の受給には、3日間連続して仕事を休み、かつ4日目以降にも休んだ日があることが必要です。
病気やけがで休んだ最初の連続した3日間は「待期期間」とされ、その待期期間があって初めて4日目以降の傷病手当が支給されるのです。
ただ、この3日間には、欠勤だけでなく、有給休暇や土日祝などの公休も含まれます。
なので、金曜日に欠勤して、土日祝が公休の会社では、金土日の3日間が「待期期間」になり、4日目以降も仕事ができない場合には、傷病手当の支給対象になります。
4)給与の支払いがないこと。
仕事ができなくて休業中であっても、給料が支払われている場合には、傷病手当金は受け取ることはできません。
ただ、その支給されている給与が傷病手当金よりも少ない場合には、その差額が支給されることになります。
例えば通常の給与が30万円で、支給される給与が15万円の場合は、20-15=5万円が傷病手当金として支給されます。(傷病手当の比率が3分の2の場合)
*他に障害厚生年金(厚生年金)、障害手当金(厚生年金)、老齢退職年金、休業補償給付(労災)、出産手当金(健康保険)を支給されている場合は傷病手当金はもらえないか一部の支給になります。
支給額の計算について
原則的に傷病手当金の支給額は給与の3分の2となります。
ただ、実際の毎月の給与は残業時間の増減などで変動するので、一定ではありません。
なので「標準報酬月額」という値を使い下記のように計算します。
傷病手当金の支給日額=支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額÷30日x2/3
*ただし、支給開始日以前に継続した期間が12ヶ月以下の場合は、その月間での標準報酬月額の平均と28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額)を比べて少ない方を平均額として使用します。(この28万円は年度により違います)
この支給日額に労務不能により休業した支給対象日数をかけた額が、傷病手当金の支給額になります。
標準報酬月額を30で割っていることからも休業期間中の公休日を含めた日数が支給対象日数になります。
標準報酬月額を決める元となる報酬は、被保険者が労務の対償として受ける全てのものです。
ただし、見舞い金などの一時的なものや、年3回以下の賞与は含みません。
健康保険では標準報酬月額は第1級の5万8千円から第50級の139万円までの全50等級に区分されていて、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りの良い幅で区分したものとなっています。
標準報酬月額は都道府県やタイミングにより区分が違いますのでその都度調べる必要があります。
協会けんぽ、健康保険ガイド URL:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3
まとめ
業務外での病気やけがで仕事ができなくなり給与の支払いが無いか充分でない時は、傷病手当金は全額支払われるか一部を補てんする形で支払われることになります。
健康保険も保険給付での負担軽減以外に社会保険のセーフティーネットの1つとして機能しています。
関連記事
-
国民健康保険には保険料と保険税がある 納める金額に差があるの?何か違いはあるの?
医療保険に加入していると、病気やけがなどをし
-
健康保険の埋葬料(費)とは 該当する費用の範囲と必要書類について
健康保険の加入者やご家族
-
雇用保険とは 加入条件と 算定基礎期間を通算できる場合について
失業保険と呼ばれていたものが、今は雇用保険と
-
年金の運用はどこがしてる 国がしないのはなぜ?支払わないとどうなる?
昔は年金は良い制度だから加入しないともったい
-
健康保険の保険料免除はあるの?、その内容と条件、申請の仕方について
日本は国民皆保険なので、健康保険などの保険に
-
国民健康保険の免除や減額はあるの?、その内容と条件、申請の仕方について
日本は国民皆保険なので、健康保険などの資格を
-
国民健康保険と健康保険の違い どっちが得かとその理由について
医療保険に加入していると、病気やけがなどをし
-
国民健康保険の葬祭費とは 該当する費用の範囲と必要書類について
健康保険では、被保険者が
-
健康保険とは 種類と保険料の算出の仕方や受けられるサービスについて
健康保険に加入していると、病気やけがなどをし
-
傷病手当金を退職後ももらうには その要件と注意すべき点について
退職すると健康保険がなくなるので、病気やけが